片恋
チャイムが鳴って、伊月くんがギリギリに教室に入ってくるのが見えた。

そのすぐ後に担任の先生が続いて、それぞれに自分の席に戻っていく。


隣同士、延藤くんとふたりだけになって、私は延藤くんの顔を見る。


「延藤くん、昨日は」

「ああ、真桜ちゃんは無事帰れた?」

「うん……」

「そっか、よかった。何度も行かないって言ってたのに、来てくれてありがとね」

「ううん……」


途中で抜け出してしまって、謝らなければいけないのは私の方な気がするのに、
先にお礼を言われて、タイミングを逃してしまった。
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