片恋
「こいつ、うざいでしよ。別に、無視して問題ないから」

延藤くんに絡んだ男子は、からかうようにそんな忠告をして、去っていった。


「んー、無視してもいいけど、なるべく相手してね。寂しいから」

延藤くんが冗談交じりの軽口をたたいて、ほんのり場が和む。

私も、そんなに自分からグイグイいけるほうではないから、向こうから距離を詰めてもらえるのは、とてもありがたいかも。


「てかさ、真桜ちゃんって」

「真桜」

延藤くんが、私に何かを聞こうとした時。

その言葉をさえぎって、第三者が私の名前を呼んだ。

この声は……──

「伊月くん」

声を聞いただけで、自然と顔がほころぶ。

伊月くんが、私たちが座っている席を見下ろしていた。
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