片恋
こういうのって安いものじゃないし、誰かに盗まれでもしたら大変。

でももうカバンはないし、帰っちゃったんだよね?

机の中に入れておいてあげようかな。

伊月くんの席の椅子を引いて、音楽プレーヤーを手に取る。

「……」

……いつも、何を聴いているんだろう。


常に気にかかっていたことが顔を出して、少し……魔が差した。


ちょっとだけ。

ほんの少し、聴くだけだから……。

人の持ち物に無断で触れるのは、誰にも見られていなくても、落ち着かない気持ちになる。

耳にイヤホンを当てて、再生ボタンを押す。

その時だった。
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