片恋
やだな。
こんなことを考えちゃうなんて。

伊月くんは、今年も変わらず仲良くしてくれているのに。

多分、……友達として。


「延藤くんに言われて、気づいたの。私以外の女子が隣の席になっていたとしても、伊月くんは同じようにイヤホンを貸していたんじゃないかって」


おかしいわけじゃないのに、なぜか口元は無理に笑おうとする。


「伊月くんは優しいから、たまたま隣にいた私にそうしてくれただけなのに」


そして、私がたまたまナデシコの大ファンだっただけ。

だけど、そんな人はきっと、同じ教室にたくさんいたはず。

ナデシコの大ファンだなんて、それは私だけじゃない。
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