片恋
「はー、何? どんな悩みかと思ったら、ただのノロケだったんじゃん」


成美ちゃんはため息をついて、眉にシワを寄せた。


「あのねぇ、真桜が隣の席になるまで、伊月くんは隣の席の女子と喋ったりしてなかったでしょ」

「そうだっけ?」

「そうだよ。話しかけても無視されてるの、見てたから。だから、あたし言ったじゃん。いくらイケメンでも、伊月くんの隣なんて最悪だねって」

「あ……」


言ってたかも。


「そしたら、なんか知らないうちに仲良くなってるし、カップルみたいなことやり始めるし。まじでびっくりしたから」


カップルみたいなこととは、イヤホンシェアのことかな。


カップルっぽい?

うーん、……ぽいのかな。
かも。

改めて口に出されると、ちょっと恥ずかしいけど。


「伊月くんが優しいのも、自分から話しかけにいくのも、真桜限定でしょ。なんで、今さら延藤の言うことなんか気にするかな」
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