片恋
「え……、真桜ちゃん、伊月とずっとナデシコの曲聴いてたんだ」

「うん、そうだけど……」


なんだろう。

そんなに驚くほど、意外なことなのかな。


ナデシコの曲は可愛いものが多いし、中学時代の伊月くんの歌声も高音で女の子みたいだから、
今のクールな伊月くんが聴いていると思うと、そのギャップにはびっくりするかもしれないけど。


でも、ナデシコ人気が一番あるのは私たちの世代だから、伊月くんが聴いていたとしても、そんなに驚くことでもないような……。


教室の扉が開く。

次の授業の先生が入ってきた。

少し声量を落として、延藤くんに話しかける。


「えっと……、変かな? 私たちがナデシコ聴いてるのって……」

「いや、変とかじゃなくて、驚いた。伊月、ずっと自分の歌聴いてたんだな」


先生が授業の号令をかけて、教室中が立ち上がる。


「あ、ほら、真桜ちゃんも立たないと」

「は、はい……」


延藤くんにうながされ、反射で立ち上がる。


え?

今、延藤くん……。

あれ?

なんて言った?

ナデシコの曲を、伊月くんの……。


…………え?
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