片恋

「ちょ、ちょっと、待って……、え、……っ延藤くん!」


延藤くんに手を強く引かれ、廊下を走って、階段裏の人気(ひとけ)のないところへ。

息が上がりながらも、精一杯に叫んで、手を振り払った。


「……延藤くん、どうして?」

「どうしてって、なんのこと?」

「全部だよ。ナデシコの正体のこととか、私の気持ち知ってて、わざと伊月くんに誤解されるようなこと言ったこととか、全部」

「あー、やっぱり真桜ちゃんだけは、知ってるんだ。ナデシコが伊月だってこと。本人に聞いたの?」

「延藤くんは、なんで?」

「そんな顔しないでよ。真桜ちゃん、怒った顔も可愛いけどさ」

「延藤くん」
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