エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
***


午後十一時。
俺は自分のデスクで、思考を巡らせた。
先ほど終わった捜査会議で、拘留期限を目前にした大島照子の起訴報告を受けた。
この先は、検察に委ねることになる。
だが、最後まで、彼女の口から、ミッドナイトや売買組織に結びつく有力な証言を得ることはできなかった。


覚醒剤で逮捕され、有罪判決を受けても、日本の司法下ではせいぜい数年の有期刑だ。
組織本体が安泰であれば、出所後の生活も保障されるからか。
それとも、報復を恐れているのか……。


組織から多額の報酬を得ているバイヤーは、末端と言えど忠誠心が強い。
しかし、バイヤーにも至らない末端の末端なら、保身に出る確率が高い。
だからこそ、歩を尾けていた男が関係者ならば、一刻も早く突き止めたい。
確かな焦りが広がると同時に、俺は朝峰に言われたことを思い出した。


『そんな貴重な証人を囲ってるなら、男をおびき出すのにぜひ協力を』——。
一瞬、思考がグラッと傾いた時、ふと影が降ってきた。


「瀬名さん。自分、これから検察庁に……って、なにしてらっしゃるんですか」


ハッとして顔を上げると、デスクの前に新海が立っていた。
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