エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
愛でられる
夜の報道番組をBGMに、私はリビングで商品のアイデアを考えていた。
床にペタリと座り、テーブルの上に置いたタブレット端末に、思いつくままにメモしていく。


郷司さんは、二十代の頃に出した企画を〝冒険〟と言った。
メンバーの中で、唯一二十代の私に求められるのは、追い風に乗った勢いのようなものだと、なんとなく理解している。


商品化には至らない、奇抜なくらいがいい。
だけど、私が書き出したアイデアといったら、どれもこれも既視感が漂う。
独創性に乏しく、パワーがない――。


「あーあ……」


頭が疲れて、私はテーブルに突っ伏した。
片方の頬をひんやりするテーブルに預け、壁時計を見遣る。


十一時半。
純平さんは、まだ帰ってこない。
私は、声に出して溜め息をついた。


増本さんに教わった、アイデア探し。
本を読んだりテレビを観たりするのもいいけど、今どんなものが売れ筋か、最新の製菓市場を知るには、やはり実際に店頭で手に取ってみるのが一番だ。


でも私は、近くのコンビニにすら、ひとりで自由に行けない。
もうすぐGWだし、少しでいいから外出したい。
それを相談したくて、純平さんを待っていたけど、今夜は諦めた方がいいかな……。
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