エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
純平さんは珍しくきまり悪そうに眉根を寄せ、小さくチッと舌打ちをする。
やっぱり覚えてなかったみたいだけど、無意識下で口走るからには、本心だというのがわかる。
身体の一部に対しての賛辞とは言え、彼から『好み』という言葉を引き出せたのがとても嬉しくて、


「ふふ。ふふふっ」


私は、襲われかけているこの状況で、クスクスと笑い出してしまった。
だけど、純平さんは、それが面白くなかったようで。


「……お前、なに笑ってやがる。随分と余裕だな」

「っ、え?」


地の底を這うような低い声で言われ、ギクッとして笑いを引っ込める。


「俺に抱かれて余裕綽々の女じゃ、いたぶり甲斐がない。これからは、少々荒っぽくいっていいんだな?」


いたぶるって、認めた。
『これからは』って。いつも、荒波にのまれる感覚でいるのに。
わざとらしく『少々』を強調したドS発言に、私はサーッと青ざめた。


「ち、違います! 余裕なんかないです、むしろ、もっと手加減してほしいくらいで……」

「下手な遠慮はするな。素晴らしく気分がいいから、今夜はいつも以上に愛でてやる」

「きゃ、きゃあああ~っ!」


『いつも以上に愛でてやる』と言って退けた純平さんは、いつも以上に楽しそうで――。
彼は、ただのドSじゃない。
真正のドSだと、私は認識を改めた。
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