エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
***
歩への確認を終えて、俺と朝峰は車でマンションを後にした。
運転席の朝峰は、うっすらと笑みを浮かべている。随分と、機嫌がいい。
しかし、俺は真逆に苦々しい気分で、助手席の窓から外を見遣っていた。
「可愛いですね。瀬名さんの子猫ちゃん」
大通りに出て、信号待ちで停車すると、彼が歌うような調子で言った。
「……お前な」
俺は窓枠に肘をのせ、頬杖をついた格好で、ジロッと視線を返す。
「それを本人の前で言うな」
「マズかったですか? ……ああ、子猫ちゃんには、ペット扱いを隠していたとか」
『そもそも、ペット扱いなどしていない』と反論しかけて、俺は結局口を噤んだ。
――果たして、そう言い切れるか?
自分に問いかけてみると、胸を張れない。
渋く顔を歪めて黙っていると、前方の信号が青に変わった。
朝峰が、わりと丁寧にアクセルを踏む。
「菅野さんに会わせていただき、ありがとうございました」
仕事口調に戻り、まっすぐ前を向いてハンドルを操作する彼に、俺は横目を向けた。
「……彼女、東京駅で作倉を見ていたか?」
朝峰が歩に画像の確認をさせる間、俺は検察庁からかかってきた電話の対応をしていた。
歩への確認を終えて、俺と朝峰は車でマンションを後にした。
運転席の朝峰は、うっすらと笑みを浮かべている。随分と、機嫌がいい。
しかし、俺は真逆に苦々しい気分で、助手席の窓から外を見遣っていた。
「可愛いですね。瀬名さんの子猫ちゃん」
大通りに出て、信号待ちで停車すると、彼が歌うような調子で言った。
「……お前な」
俺は窓枠に肘をのせ、頬杖をついた格好で、ジロッと視線を返す。
「それを本人の前で言うな」
「マズかったですか? ……ああ、子猫ちゃんには、ペット扱いを隠していたとか」
『そもそも、ペット扱いなどしていない』と反論しかけて、俺は結局口を噤んだ。
――果たして、そう言い切れるか?
自分に問いかけてみると、胸を張れない。
渋く顔を歪めて黙っていると、前方の信号が青に変わった。
朝峰が、わりと丁寧にアクセルを踏む。
「菅野さんに会わせていただき、ありがとうございました」
仕事口調に戻り、まっすぐ前を向いてハンドルを操作する彼に、俺は横目を向けた。
「……彼女、東京駅で作倉を見ていたか?」
朝峰が歩に画像の確認をさせる間、俺は検察庁からかかってきた電話の対応をしていた。