エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
……いや、責められないか。
家にいるのはわかっていたし、あの時間なら起きていると思い込んで、連絡をしなかったのは俺だ。
歩は、俺が部下を連れていて、家で俺以外の男と面を合わせるなんて、思いもしなかっただろう。


――しかし。
朝峰の小気味よい笑い声が耳障りだ。
不快に神経を逆撫でする。


「いいじゃないですか。瀬名さんにとっては、ただのペットなんですし。……ああ、いや。〝愛玩〟って字面からして、おもちゃの方が近いですかね」


揶揄する言い方に心がささくれ立ち、俺は眉根を寄せた。
朝峰は、俺を横目で見遣り、


「俺もペット飼おうかなー。料理ができる、可愛い子猫」


いつかの俺の揚げ足を取って、白々しく声を間延びさせる。


「でも、そんな都合よく見つからないか。……あ。いっそのこと、菅野さん、うちで保護しましょうか?」


俺は、じろりと彼を睨んだ。
しかし朝峰は堪えた様子もなく、ふっと吐息を零す。


「せっかくのGWなのに、あのだだっ広い家にほとんど軟禁状態じゃあ、彼女も可哀想です。瀬名さんだって、疫病神から解放されて、せいせいするでしょう?」

「…………」

「俺、瀬名さんに手籠にされた子猫でも、細かいことは気にしませんから」
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