エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「下衆が」

「どっちが、ですか」


俺の嫌みもむしろ満足げに、眉尻を上げた。


「冗談はさておき。彼女も退屈だろうし、俺に時間がある時は、食事とか買い物とか連れ出してあげていいですか。もちろん、護衛もしますんで」

「……勝手にしろ」


普段だったら、これだけ言われて黙ってはいない。
俺は歩を保護したのであり、軟禁とは酷い言い草だ。
朝峰の彼女に対する興味は九十九パーセント下心で、俺は上官として、彼を厳しく叱責しなければならない。


しかし。
俺が自分の名誉とキャリアのためだけに、彼女に不自由な生活を強いているという見方も間違いではない。


『普通の生活を取り戻せる』


朝峰に吐露したそれが、彼女の切実な願いなのは承知している。
それに……彼の言うことは八割方真実だ。
俺は、どうしようもなく嗜虐心をくすぐる彼女を、偽装花嫁と称してペットのように……いや、おもちゃにして愛玩している。


それなら、たとえ大半が下心でも、歩自身に興味を抱く朝峰の方が、よほど健全だろう。
頭ではそう納得しているのに、どうにも気が収まらない――。
俺は、口を手で覆ってそっぽを向いた。
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