エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
朝峰さんは、まっすぐ前を向いたまま。
顔も見ずに思考を見透かされて、私は怯んだ。


「帰りは俺が送るって言って、キャンセルしてもらった。瀬名さんも了承済みってこと」


そう言われて、純平さんと同じくらい背が高い彼を見上げた。
朝峰さんは回れ右をして、私にまっすぐ向き直る。


「それでも、まだ気になる? それじゃあ……」


わずかに思案する間をおき、


「ギブアンドテイクっていうのはどう?」

「え?」

「菅野さんには、俺に協力してもらう」


そう言って、ニコッと笑う。


「協力……ですか。私が」


私が戸惑い、言われたことを反芻すると、「そう」と相槌を打った。


「これから一緒に、東京駅の新幹線改札に行こう」

「東京駅」

「作倉……あのストーカー男を逮捕して、少しでも早く、君の安全で平和な生活を取り戻すために」


そう言われたら、断れない。
私は、おずおずと彼を見つめ返した。


ギブアンドテイクというのが、私を護衛するために付け加えただけなのはわかる。
どうしてそこまでしてくれるのか、彼の真意は謎だけど……。
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