エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
静かながら、確かな怒りが秘められている気がする。
私は無意識にパジャマの裾を引っ張って、怯んで後ずさりたくなるのを堪えた。


「ああ、そうだ」


純平さんが、なにか思い出したみたいに、白々しくポンと手を打つ。


「朝峰の提案は、もうひとつあった。お前、これからは、朝峰の家で保護してもらうか?」

「……え?」


なにを言われたのか理解が追いつかず、私は戸惑って聞き返した。
純平さんが、鷹揚に腕組みをする。


「ここにいるよりはよっぽど、普通の生活ができるぞ。お前、朝峰に、早く普通の生活に戻りたいって言ったんだろう?」

「っ、それは」

「俺には遠慮して言えなくても、朝峰には言いやすかったか?」


早口で畳みかけられ、グッと言葉に詰まる。
確かに、私は朝峰さんにそう言った。
でもそれは、普通の生活に戻ったら、私がしたいこと……そこに関係のない第三者だからだ。


「言いやすい、っていうんじゃなくて」


純平さんの苛立ちが強まるのを感じて、弁解しようとした。
なのに。


「朝峰となら年も近いし、甘い物が好きだから話も合う。仕事の参考にもなるだろう。ここにいるより、メリットがあるんじゃないか?」


滔々と諭すように言われて、返す言葉を失った。
なにも言えずに俯く私を、純平さんは素っ気なく一瞥して……。
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