エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「朝峰の所なら、妻を装う必要はない。夫でも恋人でも好きでもない男に、抱かれずに済むぞ」

「っ……」


思いもよらないひと言に、私は息をのんだ。


「……いや」


純平さんは私に構わず、腕を解いて顎を撫でる。


「たとえそうなっても、優しく大事に可愛がってもらえるだろう。俺がするより、ずっと」


なにを意図して言ったのか――。
信じがたい言い様に、私の脳神経は麻痺した。
思考回路が停止して、常識とか冷静な判断とか大人の対応とか、そういったものを全部超えて、感情ばかりが荒れ狂う。


「お前の好きにしてくれて構わない」


純平さんは、私の反応を待たずに、くるっと踵を返した。


「どちらにしろ、報告は不要だ。次の機会に、そのまま連れていってもらえばいい。荷物は、後で朝峰に取りに来させれば……」

「なんでそんなこと言うんですかっ!!」


早口で淡々と言い捨てる背中に、私は喉を搾る勢いで怒鳴りつけた。


「え?」


足を止めて振り返った彼の顔めがけて、ソファの上から取ったクッションを、思い切り投げつける。


「ぶっ……」


至近距離から顔面に命中して、純平さんがくぐもった声をあげた。
鼻を押さえた彼の足元に、クッションがボテッと落ちる。


「おま……」


鋭い瞳で睨みつけられても、彼を上回る怒りで全然怖くない。
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