エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
翌日、午後三時。
仕事が一段落したところで、私は『コーヒーブレイクにどうぞ』と、同僚たちに大量のお菓子を配り歩いた。


「どうしたの? こんなにたくさん」


違うグループの桃子が、ギョッと目を瞠る。
私が、このたくさんのコンビニスイーツにまつわる逸話を話すと、


「いくらなんでも、買い込みすぎでしょ」


苦笑しながら、バウムクーヘンを選び出した。


「ありがとう。いただきます」

「うん」

「ちょうど、休憩したかったの。歩、仕事立て込んでなければ、十分くらいブレイクしない?」


先輩たちからの頼まれ仕事も、終わっている。
頭を切り替えるにも、ちょうどいい。


私は増本さんに許可を得て、スイーツとマグボトルを手に、桃子と一緒にオフィスの片隅に移動した。
パーティションで仕切られたミーティングブースで、向かい合った椅子を引いて腰を下ろす。


「GWのこと、聞きたかったんだー。瀬名さんとお出かけだって、浮かれてたじゃない?」


桃子が身を乗り出して来て、私は苺のミルフィーユの蓋を開ける手を止めた。


「あー……うん」


再び動かし出した手に目を落とし、曖昧な返事をする。


「楽しかったよ」


それだけ答えて、プラスチックのフォークを手に取る私に、


「あれ?」


桃子が怪訝そうに眉根を寄せた。
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