エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
普段温厚な人間ほど、怒りを爆発させた時、その威力は半端じゃない。
おかげで、俺の心にまで、さざ波が立つ――。


「では、瀬名警視正。なにかございますか」


いつの間にか深い思考に耽っていた時、突然名指しされて、ギクッと手が震えた。


「はっ……」


俺はガタンと椅子を鳴らし、反射的に立ち上がった。
会議室を埋め尽くす刑事たちから、視線が注がれる。


なにを言う場面か……。
とっさに思考をフル回転させて、


「なんとも不甲斐ない。全員気を引き締めて、身を粉にして捜査に当たれ」


低い声で叱咤して、ドスッと腰を下ろす。
後方の席に着く刑事たちが、不満気にざわめき出した。
「鬼」とか「悪魔」とか、聞き慣れた陰口はスルーする。
捜査一課長の、『解散』の号令を待っていると……。


「すみません! 解散、待ってください!」


後方のドアから、凛とした声が響き渡った。
その場にいた全員が一斉に振り返る中、まるで凱旋するような足取りで会議室の真ん中に進み出たのは、朝峰だった。


「過去何度かの取引の際、バイヤーの近くで見張り役を務めた男の身柄を、特定しました!」


高らかな報告に、俺はハッと息をのむ。
会議室にどよめきが広がった。
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