エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
私のマンションに着いた時、そう言って三千円もまけてくれた。
「あ……ありがとうございます~」
東京に出てきてすぐ、とんでもない目に遭った。
だけど、上京しなきゃよかったなんて思いはしない。
この狭い都会で出会った人たちは、みんな私に優しい。
偶然乗り合わせたタクシーの運転手さんも、乗り換え手段を教えてくれた大島さんも、職場で出会った桃子や先輩、朝峰さんも。
――純平さんも。
東京に来て、最初の一週間だけ暮らした狭いワンルームの部屋に入った途端、私は玄関先で頽れた。
分不相応なセレブ妻の夢から醒めて、現実を目の当たりにしたら、途方もなく寂しかった。
いや、現実の急転直下の落差のせいじゃない。
これからは、純平さんがいない。
私の日常から、彼の気配も匂いも感触も……すべて失われる。
そうやって、もとに戻っていく。
偽装結婚生活が終わったら、その時、純平さんに好きって言う。
これからは、恋人になって、そばにいたい。
そう願っていたのに、想いを伝える前に、彼が私のことなんかこれっぽっちも好きじゃないことを、思い知らされてしまった。
言えなかった。
大事なことをなにも言えないまま、この先もう、純平さんに会うこともないんだ……。
「……う、ふうう」
彼の偽装花嫁だった期間は、たった一カ月なのに。
半身を削ぎ落とされたような心許なさに、涙が止まらなかった。
「あ……ありがとうございます~」
東京に出てきてすぐ、とんでもない目に遭った。
だけど、上京しなきゃよかったなんて思いはしない。
この狭い都会で出会った人たちは、みんな私に優しい。
偶然乗り合わせたタクシーの運転手さんも、乗り換え手段を教えてくれた大島さんも、職場で出会った桃子や先輩、朝峰さんも。
――純平さんも。
東京に来て、最初の一週間だけ暮らした狭いワンルームの部屋に入った途端、私は玄関先で頽れた。
分不相応なセレブ妻の夢から醒めて、現実を目の当たりにしたら、途方もなく寂しかった。
いや、現実の急転直下の落差のせいじゃない。
これからは、純平さんがいない。
私の日常から、彼の気配も匂いも感触も……すべて失われる。
そうやって、もとに戻っていく。
偽装結婚生活が終わったら、その時、純平さんに好きって言う。
これからは、恋人になって、そばにいたい。
そう願っていたのに、想いを伝える前に、彼が私のことなんかこれっぽっちも好きじゃないことを、思い知らされてしまった。
言えなかった。
大事なことをなにも言えないまま、この先もう、純平さんに会うこともないんだ……。
「……う、ふうう」
彼の偽装花嫁だった期間は、たった一カ月なのに。
半身を削ぎ落とされたような心許なさに、涙が止まらなかった。