エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
眠ろうとしても眠れず、一晩中テレビを点けていた。
その合間に訪れる束の間の睡魔に目を閉じ、断続的に意識を手放すだけの夜を過ごした。


純平さんたちが、作倉という男性を逮捕したというニュースが耳に飛び込んできたのは、正午を過ぎた頃だった。
ベッドから毛布を引き摺り落とし、床の上でミノムシのようになっていた私は、ぼんやりと顔を出した。


『警視庁は、本日未明、麻薬売買取引において見張り役を務めていたとして、作倉義一容疑者二十五歳を逮捕しました』


キャスターがニュース原稿を読み上げる途中で、容疑者の写真が画面に大きく映し出される。
モゾッと上体を起こし、テレビに見入った。


確かに、私を追ってきたあの男の人。
そして、東京駅で最初に声をかけようとした人も、こうして見ると同一人物と確信できる。


これで、私の身の安全は保障された。
普通の日常が戻ってくる。


好きな時にコンビニに行けるし、仕事帰りに桃子と飲みに行ってもいい。
純平さんと一緒に行った水族館で、今度はナイトショーを観たいな。


この一カ月、やりたいことは我慢してきた。
この開放感に、ウキウキワクワク胸を躍らせてもいいくらいなのに……。
私の心は、空虚だった。
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