エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
日本の売買組織だけでなく、ミッドナイト本体の完全壊滅をも狙うには、作倉から少しでも多くの情報を引き出す必要がある。
取調官には、朝峰が最適だ。
彼は刑事にしては物腰が柔らかく、被疑者を油断させる才に長けている。


しかし、そのやり口は実に巧妙だ。
相手が思いもしない方向から包囲網を狭めていく。
最後の最後まで追い詰められた自覚のないまま、いつの間にか自白していた被疑者も数多い。


作倉は、彼の穏やかな口調にペースを乱されつつも、複数回に渡って売買取引の見張り役を務めたことについては、『知らない』『偶然だろ』と否認し続けた。
しかし――。


「こちらをご覧いただけますか」


朝峰が、自分の前に置いていたノートパソコンを、彼の方に回転させた。


「これ。この、柱に手を突いている黒縁眼鏡の男性。あなたですよね?」


恐らく、俺が撮影した動画が再生されているのだろう。
作倉は興味なさそうにモニターに目を遣り、


「あ? ああ。多分な」


貧乏ゆすりをやめて、横柄に足を組み上げる。


「これは、先月上旬に、とある女性から助けを求められた我々の指揮官が、東京日本橋で撮影したものです」

「え。日本橋……」
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