エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
朝峰が突き止めた科学的証拠から、即令状取得手続きに取り掛かり、作倉の逮捕に夜を徹したため、ずば抜けた体力を誇る刑事たちも、疲労の色が濃い。
作倉の取調べが終わると、俺は部下全員に強制退勤を命じた。


俺もその最後にオフィスを出て、マンションに帰宅したのは、午後三時だった。
居住フロア直結のエレベーターにひとりで乗り込み、壁に凭れかかりながら、ふうと息を吐いて天井を仰ぐ。


そうして、昨夜、このエレベーターでエントランスに降りた時のことを思い出した。
作倉の逮捕に全身の神経を集中させて、意識から追いやろうとしていた。


その直前の、歩とのやり取りを。
俺が言われたこと、俺が言ったこと、すべてを――。


「っ……」


昨夜の出来事が一気に脳裏に蘇ってきて、ゾワッと寒気がした。
フロアに着くと、転げるようにエレベーターから降り、通路を走った。


ドアの前でカードキーを翳し、解錠する間ももどかしい。
勢いよく玄関を開けると同時に、


「おいっ!」


切羽詰まって、中に向かって呼びかけた。
しかし、返事はない。
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