エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
小さなケージの中に、黒い子猫がいた。
「子供が、『拾った』と連れてきてしまって」
苦笑を漏らす警官に、俺も一応は理解を示し、相槌を打ったものの。
「何故、動物愛護センターに任せない。動物は遺失物として扱わなくなっただろう」
淡々と続けると、警官はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。
「それが……せっかく連れてきてくれたのに、所管が違うと突き返すのも気が引けて……」
「それで、ここで飼育しているとでも? 他に仕事は山ほどあるだろうが」
「はっ……」
汗を拭き出す勢いの警官に、呆れ半分で溜め息をつく。
しかし――。
「……飼い主からの、届け出は?」
俺はそう訊ねながら、カウンターを抜けて奥に入った。
ケージの前でしゃがみ込み、ミルクを舐める子猫をジッと見つめる。
小さい。
生後、まだほんの数カ月といったところか。
「いえ、まだ……もうしばらくここに置いて、飼い主が現れなければ、保護センターに引き渡そうと話しております」
「そうか」
返事を聞いて立ち上がろうとすると、子猫がふっとミルクから顔を上げた。
何故だか、俺とバチッと目が合い、
「……みゃあ」
か細く、鳴いた。
その頼りない姿態が、俺がよく知る女と被る。
「っ……」
どうにも立ち去れなくなってしまい――。
「子供が、『拾った』と連れてきてしまって」
苦笑を漏らす警官に、俺も一応は理解を示し、相槌を打ったものの。
「何故、動物愛護センターに任せない。動物は遺失物として扱わなくなっただろう」
淡々と続けると、警官はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。
「それが……せっかく連れてきてくれたのに、所管が違うと突き返すのも気が引けて……」
「それで、ここで飼育しているとでも? 他に仕事は山ほどあるだろうが」
「はっ……」
汗を拭き出す勢いの警官に、呆れ半分で溜め息をつく。
しかし――。
「……飼い主からの、届け出は?」
俺はそう訊ねながら、カウンターを抜けて奥に入った。
ケージの前でしゃがみ込み、ミルクを舐める子猫をジッと見つめる。
小さい。
生後、まだほんの数カ月といったところか。
「いえ、まだ……もうしばらくここに置いて、飼い主が現れなければ、保護センターに引き渡そうと話しております」
「そうか」
返事を聞いて立ち上がろうとすると、子猫がふっとミルクから顔を上げた。
何故だか、俺とバチッと目が合い、
「……みゃあ」
か細く、鳴いた。
その頼りない姿態が、俺がよく知る女と被る。
「っ……」
どうにも立ち去れなくなってしまい――。