エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
新年度を迎え、私は無事、商品企画部第一製菓グループに着任した。
五年間地方支社で営業事務を担当しながら、自社の売れ筋商品には、常にアンテナを張っていた。
東京本社では、売れる商品をどんな風に企画しているのか。
どんな過程を経て、商品化に至るのか。


興味が尽きず、入社三年目で異動希望を出した。
人気部署だし、何年待っても無理かもしれないとも覚悟していたけど、たった二年で異動が叶うなんて、私はラッキーだ。


せっかく東京に来たのだから、絶対、空前のヒット商品を企画してみせる。
そのためにも、スタートラインで置いていかれてる場合じゃない。
東京に到着した時から、人との速度感の違いは自覚していた。
私はもともとのんびりした性格だし、意識して仕事のペースを上げないと、あっという間に置いていかれる。


一段階も二段階もギアアップして、朝から定時まで全力疾走で働き、退社する頃には身体が鉛のように重かった。
寄り道せずにマンションに帰ると、もうなにもする気力がなく、夕食もとらずにベッドに突っ伏すだけで、最初の三日間が過ぎていった。


新しい環境への緊張と疲労が蓄積していて、金曜日は朝からヘトヘトだったものの、一日の仕事を終えて解放されると、気持ちが上向いた。
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