エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「一回抱いてからじゃないと、とてもじゃないが集中できない」

「集中って、そんなっ……」


――言葉は挟んだけれど……嬉しい。
心の中で揺れ動いていた天秤が、理性を上回って本能の方に大きく傾いた、その時。


「っ、ひゃっ!?」


額になにかふにゃっとしたものを感じて、私はひっくり返った声をあげた。


「ん?」


私の声を聞き留めたのか、純平さんも顔を上げる。


「な、なんか私、おでこ踏まれた……」


私はその正体を掴もうと、頭上に目線を動かし、


「……あ」

「えっ、ね、猫っ……!?」


口元に手を遣って小さく呟く彼を押し退け、起き上がった。
廊下に正座して、長い尻尾をピンと立てる黒い子猫と、改まって対峙する。


「にゃあ」


忙しなく瞬きをする私の前で、子猫がつんとお澄まし顔で、か細く鳴いた。


「かっ……可愛いっ」


私は夢中になって両手を伸ばし、子猫を抱き上げた。


「え? え? 純平さん、この子どうしたんですか?」


興奮で声を弾ませながら振り返る。


「ああ……」


純平さんはザッと前髪を掻き上げると、やや視線を横に流して……。
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