エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
もう春なのに。
随分と重苦しい服装……と考えて、引っかかりを覚えた。
……あれ。
私、昨日も今朝も、通りすがりの男性に、同じこと思わなかった?
思い当たってみると、黒ずくめの男性に既視感がよぎった。
男性は伏し目がちに、やたらゆっくり歩いていて、たくさんの人に追い越されている。
私がジッと目を凝らしていると、ふと顔を上げ……。
「……え?」
いきなりまっすぐ視線が来て、バチッと目が合った。
それが私だけの感覚じゃないのは、男性がギクッとしたように足を止めたからわかる。
私が見ている中、目が合った事実を誤魔化すかのように、いそいそと歩道の端に寄っていく。
首を竦めてジャケットのポケットからスマホを取り出し、なにか慌ただしく操作を始めた。
「……?」
違和感をやり過ごし、先を急ごうとして。
――ちょっと待って。
今朝、あの人とよく似た男性を見たのは、マンションを出てすぐの、信号待ちの時だった気がする。
昨日は、今と同じ、会社から駅に向かう途中。
ご近所の人と職場も近いというのは、この狭い東京では、わりとあることなんだろうか。
頭では納得できるけど、心臓は思考に反旗を揚げるように、嫌なリズムで拍動し始める。
随分と重苦しい服装……と考えて、引っかかりを覚えた。
……あれ。
私、昨日も今朝も、通りすがりの男性に、同じこと思わなかった?
思い当たってみると、黒ずくめの男性に既視感がよぎった。
男性は伏し目がちに、やたらゆっくり歩いていて、たくさんの人に追い越されている。
私がジッと目を凝らしていると、ふと顔を上げ……。
「……え?」
いきなりまっすぐ視線が来て、バチッと目が合った。
それが私だけの感覚じゃないのは、男性がギクッとしたように足を止めたからわかる。
私が見ている中、目が合った事実を誤魔化すかのように、いそいそと歩道の端に寄っていく。
首を竦めてジャケットのポケットからスマホを取り出し、なにか慌ただしく操作を始めた。
「……?」
違和感をやり過ごし、先を急ごうとして。
――ちょっと待って。
今朝、あの人とよく似た男性を見たのは、マンションを出てすぐの、信号待ちの時だった気がする。
昨日は、今と同じ、会社から駅に向かう途中。
ご近所の人と職場も近いというのは、この狭い東京では、わりとあることなんだろうか。
頭では納得できるけど、心臓は思考に反旗を揚げるように、嫌なリズムで拍動し始める。