エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
よくあることかもしれない。
でも、生活時間帯まで一緒なんて、あまりにも不自然だ。


突如速度を増した心拍が、鼓動を乱す。
ドクッドクッと、耳の後ろで頸動脈が脈打つ。
頭にまでゾワッと鳥肌が立ち、私はせかせかと歩き出した。


途中、赤信号に捕まり、肩越しに後方を確認する。
先ほどよりも少し距離があるけど、やっぱり黒いダウンジャケットの男性を見留めて――。


「っ……!」


歩行者信号が青に変わると同時に、地面を蹴った。
通りの向こう側から横断歩道を渡ってくる人の隙間を縫うように、猛然とダッシュする。


都会の広い大通りに、私のパンプスの踵がアスファルトを打つ音が木霊し、ガンガンと鼓膜に響く。
五十メートルほど全速力で走り、息が上がった時、デパートの正面入り口が見えてきて、中に逃げ込んだ。


一階には、化粧品売り場が並んでいる。
私はショーケースをチラチラ見るフリをしながら、たった今通って来た入り口を視界の端で見遣り……。


「な、なんで……!」


まさにそこから、黒いダウンジャケットの男性が入ってくるのを見て、全身が総毛立った。
もう、間違いない。
あの人は、私を尾けている。
いつから? まさか、住所も知られてるの?
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