エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
私は勢いよく立ち上がり、玄関に駆けていった。


「にゃー」


何事かとばかりに、後から猫もついてくる。


「純平さん! お帰りなさい!」

「ああ、ただいま」


純平さんが顔を上げて、そう返してくれる。
彼の隣には、朝峰さんがいた。


「朝峰さん、いらっしゃい。お久しぶりです」

「うん。夏前に、追加で事情聞かせてもらって以来だね。ご結婚、おめでとう」


そう言って、可愛らしい水色のブーケを、私に手渡してくれた。


「わあっ。ありがとうございます」


はにかんでお礼を言う私の横で、純平さんが廊下に上がる。


「歩、私もいるんだけど~」


彼の後ろから、桃子がひょこっと顔を出した。


「あ、桃子」

「ちょうど、下で会った」


純平さんが、彼女を肩越しに見遣って、私に説明してくれる。


「そうなんですね。ちょうどよかった」


私がニコッと笑うのと同時に、猫が「にゃーお」と長い鳴き声をあげた。


「わ、猫! 歩たちが飼ってるの?」


桃子が、驚いた様子で目を瞠る。
私が答えるより先に、猫が「にゃー」ともう一声。


「瀬名さん、この猫、もしかして……?」


朝峰さんは、純平さんが猫を引き取った経緯を知っているようだ。
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