エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
涙混じりに小声で叫ぶという高等テクを駆使すると、一瞬の間の後、
『え?』
瀬名さんも、ようやく私の話に耳を傾けてくれた。
この機を逃さず、『すぐ行く』という言葉を期待して、必死に今の状況を伝える。
ところが。
『交番に駆け込め』
すげない指示が返ってきた。
「ま、待って! それまでに、捕まっちゃいますっ……!」
スマホに向かって発した声は、悲壮な泣き声に変わった。
「私、上京したばかりでひとり暮らしで、東京に友達も知り合いもいない。怖いんです。お願い、助けて……」
電話の向こうで、瀬名さんは逡巡するように沈黙したけれど。
『どこにいる?』
「え?」
短く問われ、条件反射でピタッと足を止めた。
『今、どこかと聞いている』
「あ。会社の近く。日本橋のデパート……」
無意味に辺りを見回しながら、答えると。
『通りに出て、待ってろ』
「っ、え?」
『デパートの中じゃ、見つけるのに苦労する。そこの通りなら交通量も多いし、通行人も絶えない。たとえ声をかけられても、危害を加えられることはないだろう。十分ほどで到着する』
瀬名さんは、キビキビと事務的に言って、私の返事を待たずに電話を切った。
『え?』
瀬名さんも、ようやく私の話に耳を傾けてくれた。
この機を逃さず、『すぐ行く』という言葉を期待して、必死に今の状況を伝える。
ところが。
『交番に駆け込め』
すげない指示が返ってきた。
「ま、待って! それまでに、捕まっちゃいますっ……!」
スマホに向かって発した声は、悲壮な泣き声に変わった。
「私、上京したばかりでひとり暮らしで、東京に友達も知り合いもいない。怖いんです。お願い、助けて……」
電話の向こうで、瀬名さんは逡巡するように沈黙したけれど。
『どこにいる?』
「え?」
短く問われ、条件反射でピタッと足を止めた。
『今、どこかと聞いている』
「あ。会社の近く。日本橋のデパート……」
無意味に辺りを見回しながら、答えると。
『通りに出て、待ってろ』
「っ、え?」
『デパートの中じゃ、見つけるのに苦労する。そこの通りなら交通量も多いし、通行人も絶えない。たとえ声をかけられても、危害を加えられることはないだろう。十分ほどで到着する』
瀬名さんは、キビキビと事務的に言って、私の返事を待たずに電話を切った。