エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
瀬名さんは唇を結んで、『まだなにかあるのか』とでも言いたげに、鬱陶しそうな視線を向けてくるだけ。


「ひとまず、って。私は今夜どうすれば……」

「着いたぞ。さっさと降りろ」


質問の途中で、エレベーターのドアが両側に開いた。
トンと背中を押され、私はほとんどつんのめりながら、三十階のフロアに降り立ってしまった。


瀬名さんはスタスタと通路を進んでいき、奥の角部屋の前で止まった。
ドア脇のパネルにカードキーを翳して認証させ、ドアを解錠する。


……すごい。これぞ最先端という感じ。
ハイテク設備に感銘を受ける私を、瀬名さんは『どうぞ』と促してくれるでもなく、さっさと先に玄関に入っていった。
私も慌てて、目の前で閉まりそうになるドアの隙間から、身を滑らせる。


「お、お邪魔しまーす……」


いろいろ度肝を抜かれて、『平気な顔でお邪魔できるわけないじゃないですかっ』と口にした時の気概はなくなっていた。
彼の後を追って、長い廊下を奥まで突っ切ると、ドア口に立った私の視界いっぱいに、広々としたリビングダイニングが映り込んだ。


「うわー……」


このリビングだけで、私のワンルーム何戸分だろう?
高層階の角部屋という特性上、向こう側は一面ガラス張り。
視界を阻むものがなにもない状態で、東京の空を望める。
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