エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
あいにく、今は真っ暗だけど、天気のいい休日などは、眺めを堪能できそうだ。


ドア口に突っ立って感嘆する私に構わず、瀬名さんはスーツの上着を脱ぎながら、さらに奥に歩いていった。
私も、室内を見回しながら、後に続く。


立派なリビングに相応しく、家具もまた贅沢だ。
高級家具店のショールームに展示されていそうな、重厚なサイドボードに、ホームシアター張りに大きなテレビ。


瀬名さんが向かって行ったアイボリーの皮張りのソファは、ラム革だろうか。
上質で柔らかそうなのが、見ただけでわかる。
彼はそこに上着を無造作に放ると、私をチラッと一瞥して、「座れ」と命令した。


「は、はい。失礼します……」


私は従順に返事をして、隅っこに身を寄せ、浅くちょこんと腰かけた。
瀬名さんはネクタイを緩めながら、大きく機能的な調理台が置かれた、スタイリッシュなキッチンに入っていく。


コーヒーを淹れたのか、香りのいい湯気が立つマグカップをふたつ手に、こちらに戻ってきた。
私の前のテーブルに、ひとつ置いてくれる。


『どうぞ』とは言ってくれないけれど、どんなに短くても無駄な説明は省く人だと、もう十分わかっていた。
私が両手でマグカップを持ち上げると、自分は対面のソファに移動して、ゆったりと腰を下ろした。


「いただきます」
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