エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
――そっちか。
考えてみれば、私を釈放してくれた時も、部下にそう言っていた。
ときめいてしまった分、がっかりだ。
肩を縮めて溜め息をついた私に、


「そういうわけで、お前を野放しにはしておけない。男の身元が判明してシロと断定できるまで、クロなら逮捕するまで。当面の間、お前はここで生活しろ」


瀬名さんが腕組みをして、そんな命令をした。
私は、なにを言われたのか瞬時に理解できず……。


「……は?」


たっぷり二拍分の間を置いてから、恐る恐る顔を上げた。


「仕事への行き帰りは、俺の実家から運転手を寄越させる。無駄に出歩くな」

「運転手!?」

「それから、家に出入りするのをマンションの住人に見られて、女を連れ込んだと誤解されると迷惑だ。お前は、俺の妻ってことにしておく。コンシュルジュにもそう言っておくから、そのつもりで……」

「せ、瀬名さんの妻を装って一緒に生活って……偽装結婚ってことですか!?」


思考回路が一気に繋がり、私はギョッと目を剥いて、声をひっくり返らせた。


「いや。その間、俺は実家なり宿舎なりに……」

「ど、どうしよう。男の人と付き合ったこともない私に、瀬名さんの妻が務まるかどうか……」


動揺のあまり落ち着かず、ソワソワと立ち上がる。


「おい、人の話を……」
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