エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
地味な屈辱感で、プルプルと震えていると、『で?』と短く促された。


『駅を出た。あと五分以内に、用件を終わらせろ』


素っ気ないものの、聞く耳を持ってくれるこの短い時間を、無駄にはできない。


「じゅ、純平さん。今日は何時頃帰ってこれますか?」


無意味に身を乗り出して、早口で切り出す。


『は?』

「妻を装うって、具体的になにをすればいいか考えたんですが、まず夕食の支度をしようかと。好きな食べ物を教えてもらえれば、作って待ってます」


勢い込んで畳みかけると、わずかな間の後、


『……はあ』


溜め息で返された。


「えっ。ダメですか?」


予想の遥か上を行く気のない反応に、ショックを隠せない。


『お前、冷蔵庫の中見たか?』

「え?」

『それで作れると言うなら、やってみろ』

「……?」


私はキッチンを振り返ってから、ゆっくり立ち上がった。


「ええと……中、拝見します……」


キッチンに小走りして、単身者には立派すぎる5ドアの冷蔵庫を開けてみて……。


『わかったか。余計なことはしなくていいから、今夜に備えて、大人しく身体休めてろ。じゃあな』
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