エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
彼の反応を上目遣いに観察しながら、向かい側の椅子に腰を下ろす。
純平さんは、一気に半分ほど水を呷ってから、「ふう」と息をついて口元を手の甲で拭った。
そして。


「あれだけで、よくこれだけ作れたな」


しげしげとコロッケを見下ろし、どこか感心したような口ぶりで呟く。
多分というか絶対、簡単に人を褒めたりしそうにない人からの賛辞に、ちょっと自分が誇らしい。


「私、食べ歩きが趣味で。好きが転じて、食品メーカーで働いてます。昔から母の手伝いをしてたので、料理は結構得意なんです」


声を弾ませ、二の腕に力瘤を作る仕草をして見せると、彼の視線がこちらを向いた。


「そう言えば、お前の勤務先、聞いてなかった」

「あ、そうですね!」


会社名を告げると、純平さんが「ああ」と相槌を打った。


「知ってる。わりと大手だな」

「日本橋にある東京本社で、この四月から商品企画部の所属です。あ。後で名刺を……」

「いらん。それより、いただいていいか」


涼しい声で私を遮り、早速箸を手に取る。


「は、はいっ。どうぞ、召し上がってください」


私の個人情報には関心なさそうだけど、私が作った夕食には興味津々の様子。
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