エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
俺も最前列の席から立ち上がり、並びの警視監に目礼して、出口に向かった。
「瀬名さん」
廊下に出たところで声をかけられ、足を止めて振り返った。
警視庁所属の警視、朝峰拓哉が、弾むような足取りで追ってくる。
俺よりふたつ下の三十一歳で、準キャリア。
俺の従弟に当たる。
一族の集まりの際、瀬名本家で会うこともあり、子供の頃は互いに名前で呼び合っていた。
それぞれ警察という階級社会に身を置き、名字で呼ぶようになったが、身内というのもあり、捜査一課の中で唯一、〝悪魔〟と恐れられている俺に物怖じしない。
「なんだ」
俺は、スラックスのポケットに片手を突っ込んで応じた。
朝峰は、無造作に散らした、癖のある焦げ茶色の短い髪をザッと掻き上げながら、俺の前で立ち止まった。
やや下がり気味の目尻をした、端整な顔立ち。
普段は人当たりがいい男だが、刑事らしく凄むと、なかなかの迫力がある。
「先々週、瀬名さんが送ってくれた動画の男ですが……」
「突き止めたか」
「残念ながら」
報告の途中で言葉を挟んだものの、即答されて、短く浅い息を吐く。
「瀬名さん」
廊下に出たところで声をかけられ、足を止めて振り返った。
警視庁所属の警視、朝峰拓哉が、弾むような足取りで追ってくる。
俺よりふたつ下の三十一歳で、準キャリア。
俺の従弟に当たる。
一族の集まりの際、瀬名本家で会うこともあり、子供の頃は互いに名前で呼び合っていた。
それぞれ警察という階級社会に身を置き、名字で呼ぶようになったが、身内というのもあり、捜査一課の中で唯一、〝悪魔〟と恐れられている俺に物怖じしない。
「なんだ」
俺は、スラックスのポケットに片手を突っ込んで応じた。
朝峰は、無造作に散らした、癖のある焦げ茶色の短い髪をザッと掻き上げながら、俺の前で立ち止まった。
やや下がり気味の目尻をした、端整な顔立ち。
普段は人当たりがいい男だが、刑事らしく凄むと、なかなかの迫力がある。
「先々週、瀬名さんが送ってくれた動画の男ですが……」
「突き止めたか」
「残念ながら」
報告の途中で言葉を挟んだものの、即答されて、短く浅い息を吐く。