エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「東京駅で、大島に接触した女」

「え?」

「菅野、歩」


俺は最小限の返答をして、口を噤んだ。
朝峰が思考を巡らせるように眉根を寄せ、「ああ」と言ってポンと手を打つ。


「新海さんが、マトリの田込さんとしょっ引いたとか。……その彼女が、瀬名さんにどんな情報を?」


横から、探るような視線を向けてくる。


「と言うか、瀬名さんの命令で、簡易検査で陰性だけ確認して釈放して、調書取ってなかったですよね。なのにどうして、瀬名さんに直接?」


興味津々といった顔つきで畳みかけられ、俺は無言で顎を撫でた。
朝峰は犯罪者プロファイリングに精通していて、俺自身、その観察眼を認めている。
ここで下手に誤魔化しても、そのうち見破られる。


「あの男からストーカー被害に遭って、今俺が保護している」


溜め息混じりに答えると、朝峰はポカンとした顔で、「は?」と聞き返してきた。


「瀬名さんが? 直々に?」

「最凶に運の悪い、一般人だ。だが、これ以上巻き込まれるようじゃ、俺の始末書どころの騒ぎじゃない」


素っ気なく言い捨て、ふいと顔を背ける俺の隣で、


「……は~ん」


ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべる。
< 90 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop