エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「この間裁判所に行った時、梗平さんからチラッと伺ったんですが……瀬名さん、毎日袴田さんに誰かの送迎をさせている、とか。そういうことでしたか」


梗平というのは、俺の兄だ。
長兄のくせに、警察ではなく司法の道に進んだ瀬名一族の異端児で、現在裁判官の職に就いている。
あの兄貴が、朝峰にどんな余計なことを言ったのか……。


「その分の報酬は、俺が別途支払っている。文句を言われる筋合いもないが」


ムッとして眉をひそめる俺に、彼は「いえいえ」と手をヒラヒラさせて否定した。


「文句など、ありませんよ。ただ……瀬名さん、最近なにかいいことでもあったのかと、捜査一課一同、噂していて」

「え?」

「ここ数日、瀬名さんの口角が、通常比最大一度上がってるので」


俺は、とっさに口元に手を遣った。
それを、彼は〝図星〟とでも捉えたようだ。
探る視線が鬱陶しい。


俺は、唇を結んで黙り込んだ。
なにかいいこと……。
なんら変わり映えしない俺の日常で、変化といったら、間違いなく歩の存在だろう。
通常比一度口角が上がっていると言われても、彼女の保護はいいことどころか厄介事だ。
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