エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
桃子はマンションの住人ではないから、夫婦を装う必要はないと思った。
純平さんは警察だし、偽装結婚を知られるのはマズい。
この場合、一番怪しまれないのはどういう答えか――。
『お、お兄ちゃん。お兄ちゃんなの。私の』
それほど考える時間もなく、追い詰められて、私はとっさにそう口走っていた。
『え。お兄さん……?』
『妹が、いつもお世話になっています』
純平さんがスマートに、私に口裏を合わせてくれた。
『すみませんが、妹と食事の約束をしているので、これで』
疑わし気な桃子に向かって、流れるように嘘をつくのを聞いて、何故だか私の胸がズキッと痛む。
なんのためらいもなく〝妹〟と肯定され、自分で言ったのに傷ついているのを自覚して、無意識に胸元の服をギュッと握りしめた。
純平さんはそんな私を気にせず、『早く乗れ』と促してくる。
『は、はい。ごめんね、桃子。また明日……』
挨拶もそこそこに、私が急いで助手席に乗り込むと、ベンツはすぐに走り出した。
無駄に息をひそめ、バックミラー越しに彼女の姿が見えなくなってから、運転席の彼をそっと窺う。
『あの……』
『俺はいつから、お前の兄になったんだ?』
呼びかけをビシッと遮られ、思わずギクッと肩を縮める。
純平さんは警察だし、偽装結婚を知られるのはマズい。
この場合、一番怪しまれないのはどういう答えか――。
『お、お兄ちゃん。お兄ちゃんなの。私の』
それほど考える時間もなく、追い詰められて、私はとっさにそう口走っていた。
『え。お兄さん……?』
『妹が、いつもお世話になっています』
純平さんがスマートに、私に口裏を合わせてくれた。
『すみませんが、妹と食事の約束をしているので、これで』
疑わし気な桃子に向かって、流れるように嘘をつくのを聞いて、何故だか私の胸がズキッと痛む。
なんのためらいもなく〝妹〟と肯定され、自分で言ったのに傷ついているのを自覚して、無意識に胸元の服をギュッと握りしめた。
純平さんはそんな私を気にせず、『早く乗れ』と促してくる。
『は、はい。ごめんね、桃子。また明日……』
挨拶もそこそこに、私が急いで助手席に乗り込むと、ベンツはすぐに走り出した。
無駄に息をひそめ、バックミラー越しに彼女の姿が見えなくなってから、運転席の彼をそっと窺う。
『あの……』
『俺はいつから、お前の兄になったんだ?』
呼びかけをビシッと遮られ、思わずギクッと肩を縮める。