※あの乙女はニセモノです
男はグッと叩いた女の子に顔を近づけて言った。
たぶん、その声は私がいる場所でやっと聞こえるような声だったと思う。
でもその威圧感は周りにいた人にも伝わるもので。
これは怒らせちゃまずい人がもう1人居たって感じだな。
私はそっと亜子に近づいて両肩を掴む。
「亜子、怪我はない?」
亜子は小さな声で問いかける私を見てコクリと頷いた。
「あ、亜子は大丈夫…だけど。どうしよう、ゆりちゃんが…」
「うん、だから、ごめんね。私ちょっと行ってくるよ」
小さく震える亜子の頭をぽんぽんっと叩いてから私は男の方をみる。
そして深呼吸を1つした後、無言で男の手を引いて保健室へ向かった。