※あの乙女はニセモノです
何でそこまでできるの。
「…みゅうちゃん先輩。こっち向いて?」
今までに聞いたことないくらい優しいその声に思わず振り向きたくなる。
でもそれを我慢して私はゆっくりと首を横に振った。
今顔みたら絶対堪えられない。
「亜子先輩は心優の大切な人なんでしょ?だったら俺が痛い思いする事なんてどうでもいい。…好きな人の大切な人を守るのは当然じゃない?」
好きな人の大切な人?
守るのは当然…?
なにそれ。
私の知ってる男は絶対そんなこと言わない。
私の知ってる男は…。
でもこの男は言っちゃうんだ、それも簡単に。
そう思った瞬間、胸の中にあったモヤモヤが消えて自然と涙がこぼれた。