※あの乙女はニセモノです

こんな、よりにもよってこいつの前で泣くなんて。



恥ずかしいー…。



私は両手で一生懸命涙を拭った。



もしかしたらバレてるかもしれないけど、こんな顔見せたくない。



お願い、早く涙止まって。



「ゆっくりでいいよ。俺、何も見てないから。」



男はそう言って私の頭を撫でた。



優しくて暖かい手。



もう、認めるしかないじゃんこんなの。



「……ねぇ」



「ん？」



私はまだ目に微かに残った涙を振り切るように振り向いた。



思ったよりも近い距離で目が合う。



「ありがとね。…ゆり」



私は少しぎこちなくにっと笑って見せた。



ーきっと私の知ってる男とこいつは少し違うのかもしれない。