身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「あの報道については信じるなと連絡したはずだが」

「でも」

膝の上の手をきゅっと握って、唇をかみしめる。あんな写真を週刊誌に撮られて、疑わない方がおかしい。

「信じるなって言われても……」

椿の言いたいことを察したのか、仁は短く息をつく。

「わかった、詳しく説明する。とりあえず人のいない場所に向かおう」

椿はこくんと頷く。人のいない場所と言う割には、車は都心に向かっていく。

道行く人々の視線すら怖くて、顔を隠すようにうつむいた。

考えてみれば、人に囲まれてマイクを向けられるなどという経験は初めてで、今さらになって恐怖が押し寄せてきた。



辿り着いたのは仁が懇意にしているシティホテルの地下駐車場。裏口で待ち構えていたスタッフが仁と椿を首尾よく中へ案内してくれた。

歩けない椿にスタッフはすぐさま履物と車椅子を用意してくれたけれど、仁は「結構だ」と断って椿を横抱きにする。

さすがに気恥ずかしくなって仁に「履物をお借りしていいですか?」と小声で尋ねてみたけれど、「黙って運ばれておけ」と却下されてしまった。

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