身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
もしも椿の存在がなければ、女優との関係をうやむやなままにしておいてもよかったのだろう。
だが、報道陣の前で椿を恋人だと宣言したことにより、二股疑惑に対する説明責任が生まれてしまった。
「すみません、私のせいで……」
椿さえあの場に出て行かなければ、もう少しシンプルに事態を収拾できたかもしれない。
仁は不思議そうな顔をして「なんのことだ?」と首を傾げた。
「私が報道陣に捕まったりしたから、余計に事態がこじれて……」
「ああ」
仁が苦笑する。膝に肘を置きだらんと腕を垂らして、椿を見上げた。
「椿は俺が女優と結婚でもするかと思って、慌てて飛んで来たんだろう? 菖蒲の着物まで引っ張り出してきて」
「……姉の着物を着ろと命じたのは父です、と、一応釈明しておきます」
「なら椿は、俺が女優と浮気しようが結婚しようが、どうだってかまわなかったってことか」
「そんなこと、ない……!」
勢いよく否定したものの、どう説明したらいいのかわからず口ごもる。
仁の心が別の女性にあると知って、酷くショックを受けたのは事実だ。
なにより、椿にはしてくれたことのない、唇へのキスをしていたことに傷ついた。
だが、報道陣の前で椿を恋人だと宣言したことにより、二股疑惑に対する説明責任が生まれてしまった。
「すみません、私のせいで……」
椿さえあの場に出て行かなければ、もう少しシンプルに事態を収拾できたかもしれない。
仁は不思議そうな顔をして「なんのことだ?」と首を傾げた。
「私が報道陣に捕まったりしたから、余計に事態がこじれて……」
「ああ」
仁が苦笑する。膝に肘を置きだらんと腕を垂らして、椿を見上げた。
「椿は俺が女優と結婚でもするかと思って、慌てて飛んで来たんだろう? 菖蒲の着物まで引っ張り出してきて」
「……姉の着物を着ろと命じたのは父です、と、一応釈明しておきます」
「なら椿は、俺が女優と浮気しようが結婚しようが、どうだってかまわなかったってことか」
「そんなこと、ない……!」
勢いよく否定したものの、どう説明したらいいのかわからず口ごもる。
仁の心が別の女性にあると知って、酷くショックを受けたのは事実だ。
なにより、椿にはしてくれたことのない、唇へのキスをしていたことに傷ついた。