身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「……仁さんは、こういうのが好みなんですか?」

「好みで選んだというよりは、椿に似合いそうなものを選んだ」

まぁ要するに好みなのだが。ひとつだけ名誉のために釈明しておくと、赤い下着をつけた女性に興味があるわけではない、赤い下着をつけた椿に興味がある。

「下着で手を止めるな。他にも靴やアクセサリーも入っている」

「は、はい!」

もうひとつの紙袋の中から椿はシューズボックスを取り出す。中はワンピースと揃いの色のパンプスが入っていた。

ネックレスやブレスレット、イヤリング、バッグにヘアアクセ、コスメも、すべてワンピースに合う色合いで統一されている。

「ありがとうございます……私、こんなに素敵なもの、いただくなんて初めてで……」

震える声で感謝を告げられた。涙を堪えているのか頬の血色がよく、唇も自然な赤色に染まっている。

――おいしそうだ。

耐え切れず、仁は椿に歩み寄ると素早い仕草で顎を持ち上げ、食べてといわんばかりにぷっくりと膨れている愛らしい唇にかぶりついた。

「っ――!」

びくんと椿の体が震え上がり硬直する。後頭部をそっと支えると、なされるがまま、うっとりと口づけの心地に酔いしれた。

「着替えるといい。脱がしてやろうか?」

割と本気で言った仁だったが、椿はぶんぶんと首を大きく横に振る。

「それは……恥ずかしい、です」

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