身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「わからないのか? やはり今すぐその服を脱がしてしまうか……」

椿の本能が身の危険を告げた。なにがわからないって、なぜ仁が突然そんなことを言うようになったのかがわからない。

「仁さんっ……落ち着いて、さっきしたばかりです……!」

いつもよりずっと直情的な仁に、椿の鼓動がドキドキと騒ぎ出した。

仁の瞳がどんどん甘く蕩けていって、椿の体温もつられるようにじわじわと上昇していく。

「椿……」

ソファの上に押し倒されると、いつもは背中にあたるはずの帯が今日はなく、コロンと座面に転がされてしまった。

仁の片手が椿の太ももに回り、柔らかなワンピースの裾を押し上げていく。

――いつもはこんなことしないのに……あ、もしかして洋服だから?

なにしろ、少し生地をたくし上げるだけで素肌に触れられてしまう。

しかも、着物と違って崩れない。洋服とはなんて官能的な装いなのだろう。

「洋服の方が、こういうことをしやすいから……?」

椿の呟きに仁はひくりと表情を引きつらせた。

「……言っておくが、やましいことがしたくて服を贈ったわけじゃないからな?」

慌てて仁は椿の足の付け根に潜り込ませていた手をどかす。

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