身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「……わかった。脱がせるのは後にする。真面目に話したいこともあるしな」

ようやく体をどけてくれたことに椿は安堵しつつも、妙に拍子抜けした気分だ。

熱の冷めやらぬ頬をパタパタと仰ぎながら、椿はソファの上で姿勢を正す。

――真面目な話ってなんだろう?

仁は椿が落ち着いたのを見て、ようやく話を切り出した。

「椿。君の両親にも話したが、会見の中で婚約者がいることを伝えたいと思っている。かまわないか?」

「え? ええ、もちろん。嬉しいです」

「君の退路を断つことになる。もう俺からは逃れられな――」

「その質問はもうやめましょう。何度尋ねられても、私の意思は変わりません」

椿が仁の唇の前に人差し指を突きつけると、仁はその手を握り込んで指先にちゅっと口付けた。

「わかった。もう聞かない。誰がなんと言おうと、椿を俺の妻にする」

椿の手を自分の頬に持っていき、ゆっくりと顔を近づけてくる。

「そういうのは、後にするって……」

「キスだけだ」

緩慢な仕草で唇を絡め、深く食んで味わう。

二度、三度と重ねた後、仁は体を離した。まだ少し表情は熱を帯びているが、ならすように深くソファにもたれる。

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