身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
――初めて男性と一線を越えた。それも、憧れだった姉の婚約者と。

椿はぼんやりと自分の体を確認する。下腹部に違和感が残っていて、腰や足の付け根のあたりがずんと重たい。

――キスは一度もしてくれなかった……。

それが自分と菖蒲との違いなのだと思い知る。

菖蒲は器量がよく、賢くて、みなせ屋で働いていても常連の心を上手に掴んでいた。

きっと仁の心を掴むのも造作もないことだったのだろう。

対して椿は、取り立てて美しいわけでもなく、平凡極まりない人間。

こんな自分が仁の相手など務まるはずもないのに、仁は文句のひとつも言わず椿を抱いた。

この行為が仁にとって愛情表現ではなく、子どもを作るための作業にすぎなかったから。

なんて惨めなのだろうと、椿はぐすっと鼻をすすって再び目を閉じた。


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