身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
不意に垣間見えた仁の子どもっぽい一面に椿は苦笑しつつ、なんとか勝たせてあげられないだろうかと穴を眺める。うーん、ダメだ。もっと近くからよく覗き込まないとわからない。

第六戦目、勝利の女神の憐みを受けたのか、ようやく仁が勝利を手にした。

「おめでとうございます!」

思わず拍手。仁は頭を抱え「一勝五敗か……なんでも言うことを聞く」と自主的に罰ゲームを提案してきた。

「そうですねぇ~……」

特に聞いてもらいたい願いはないのだが、せっかくの機会だからと椿は考えを巡らせる。

「じゃあ、少しの間、目を瞑っていてもらえますか?」

椿はそう命令すると、目を閉じてじっとしている仁に顔を近づけてまじまじと観察した。

せっかくなのでゆっくりと仁を眺めさせてもらおう。いったいなにがどうなったら、これほどまでに綺麗な顔ができあがるのか。

最後は唇にマカロンでも当てて、驚かしてしまおうか。

吐息がかからないように息を殺して、じっと仁の顔を見つめる。

しみひとつないすべすべの白い肌に、綺麗な形の眉、長い睫毛、すっと通った鼻筋、すべてが芸術作品のように形が整っている。唇はまるで――。

そのとき、花開くように仁の唇が開いた。

あ、と呟きを漏らす間に椿の唇にかぶりついてくる。いつの間にか仁の手は腰に回っていた。

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