身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「チェスを勉強しておきます。今度は一緒に楽しめるように」

椿が笑うと、仁も柔らかく微笑んでくれた。

「そろそろ夕食の時間だが、椿はお腹が減っている?」

もの言いたげな仁に尋ねられ、椿は自分のお腹に手を当てる。

「……さっきケーキをたくさん食べたので、まだあまり」

「俺たちはいつも甘いものでお腹が膨れて、ディナーに辿り着かないな」

どうやら仁も同じだったらしく、困った顔で笑っている。

「じゃあ、少し体を動かしても? さっきは後にするなんて言って強がったが、ずっとお預けを食らっている気分だ」

椿を抱いたまま仁はソファの上に転がる。仁の体の昂りを感じ取り、椿は顔が真っ赤になった。

――恥ずかしい……そして、嬉しい。

「あのね、仁さん。さっき私、鏡で――」

お風呂場での出来事を仁に小声で報告する。過激な下着に驚いて、とても恥ずかしかったこと。

でもその反面、いつもとは違う自分になれたような気がしたこと。きちんと仁に見てもらいたいと思ったこと――。

「もしも、似合っていたら……褒めてくださいますか?」

仁の服をきゅっと掴んでお願いしてみると、甘くて鋭い瞳が椿の胸元に落ちてきた。

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