身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
愛する人と過ごす時間は、どうしてこうも早く過ぎ去るのだろう。

翌日の月曜日。仁はマスコミ対策もありホテルを出ず、リビングの隣のプレイルームからリモート会議に参加した。

椿は邪魔にならないように、リビングで仁から借りたタブレット端末を使って本を読んでいる。

バトラーが最高級の紅茶をこまめに淹れに来てくれる。今日もテーブルには三段のケーキスタンドが置いてあってお腹は常にいっぱいだ。

「なんの本を読んでいるんだ?」

会議がひと息ついたらしく、仁がプレイルームから出てきた。

テレビ会議に出席していたこともあり、昨日秘書が持ってきた三つ揃えのスーツを着ていてとびきり凛々しい。

ちなみに、今日の椿はホテルに備え付けられていた浴衣を着ている。昨日着ていたワンピースは今朝クリーニングに出して、夕方には戻ってくる予定だ。

「雑誌です。月刊和装スタイル八月号。電子書籍ってかさばらなくて便利ですね! この雑誌、家に置いておくと父が怒るんです。邪道だって」

モードとしての和装ファッションを取り扱った雑誌で、短めの着物にブーツを合わせるような独特な着こなしも掲載されている。

椿は粋で面白いと思うけれど、昔ながらの日本文化を正とする父は許せないらしい。

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